calamity    *Web用に一部改行してます。




 固い床に横たわったままゆっくりと熱い息を吐き出せば、下半身を跨いで自分の上に乗っているマクギリスは小さく笑った。
「なんだ、もう限界か?」
 言いながら赤い舌を覗かせたマクギリスは、ぺろりと自分の唇を舐めながらぎゅっと後孔を締め付ける。
「う……っ」
 今にもはち切れそうな欲望を締め付けられた石動は、小さく呻き声を上げながらもなんとか堪える。ギリギリのところで堪えた石動に、マクギリスはくすくすと楽しげに笑いながら服の上から石動の腹をそっと撫でた。
 たまには趣向を変えてみるかとマクギリスに床へと押し倒されたかと思えば下半身の前だけをくつろげられて、そのまま上に乗られた石動は、普段とは違いしっかりと制服の上着を着込んでいた。今この瞬間に部屋へと来客が来ても、ズボンの前さえ整えればいつでも出迎えられる格好だ。
「少しは成長したな、石動。前はこれで、すぐに逝ってしまったのに」
 切っ掛けはなんだったか。もう何度となく、石動は上官でもある、目の前の美貌の持ち主であるマクギリスと体を重ねていた。
 まるで絵本の中の王子様のように金髪碧眼の整った顔立ちをしたマクギリスは、洗練された出で立ちも相まって誰もが目を奪われずにはいられない。
 同じ男であるはずの石動でさえ、初めてマクギリスを見たときにその姿に目を奪われた。一体これまで、その美貌でどれだけの人間の目を奪ってきたのか。
 石動が見惚れて固まってしまったときでさえ、そうと気づきながらも嫌な顔ひとつせず、マクギリスは微笑んでさえみせた。多分その頃から、石動はマクギリスに惹かれていた。
 だからといって、マクギリスとどうにかなりたいという願望はなかった。そもそもマクギリスは、ギャラルホルンを束ねるセブンスターズの一門であるファリド家の嫡男。コロニー出身者である自分がどうにかできる相手ではなかった。
 ただ傍にいて、支えたい。絶望していた自分に一筋の希望を与えてくれたこの男のために働きたい。ただそれだけだったはずだった。
「……准しょ、うっ」
 ゆるゆると腰を動かしながらも、巧みに後孔を締め付けるマクギリスに、耐えきれないと石動は床へと横たえていた手を伸ばそうとすれば、その手がマクギリスへと伸びるより早くぴしゃりと叩き落とされた。
「言ったはずだぞ、石動。今日は動かず、ただ横たわっていろと」
 体を倒したマクギリスは石動の顔を覗き込みながら、不敵な笑みを浮かべる。
「ですが准将、もうそろそろっ」
 マクギリスの巧みな締め付けで、欲望は爆発寸前だった。今はまだなんとか堪えているが、それも限界に近い。
 ズボンの前だけをくつろげただけの石動同様、マクギリスもまた制服の上着を乱すことなく、きっちりと着込んでいた。対して下半身はなにも穿いておらず、素肌をさらして石動の上に乗っていた。
 しかも着ている制服はギャラルホルンの一般的な制服ではなく、セブンスターズの当主だけが着ることを許されている代物だった。制服の上着はきっちりと着込んでいながら、下半身は素肌をさらしている扇情的な姿だけでも大いに雄としての欲望を煽られるというのに、絶対に手を出せないセブンスターズの当主に手を出しているという背徳感に、より一層石動の欲望は煽られる。
「もう少し頑張れるだろう、石動?」
 顔を覗き込みながらマクギリスは小首を傾げる。大の大人が小首を傾げたところで可愛らしくもない。たが、自分の見せ方をよくよく知っているマクギリスに、石動はごくりと息を呑み込んだ。
「石動、返事は?」
「………は、い」
 耳元で意地悪く甘くささやくマクギリスに、否と言えるはずがなかった。ぐっと眉間に皺を寄せながら懸命に堪える石動に、マクギリスはその唇へと口づける。
「良い子だ」
 倒した体を起こしたマクギリスは、ゆったりとした動きで再び腰を動かし始めた。
 目を年ながら自分の快楽を追い求めて腰を振るマクギリスを、手持ち無沙汰の石動はじっと見つめる。
 整った顔立ちをしたマクギリスを一目見たとき、精巧にできた人形のようだと思った。これほどまでに美しい男を、石動は他に知らない。
 もしかしたら触れたら冷たいのではないだろうかと。そう思っていたマクギリスは意外なことにその体温は高かった。今も触れ合っている部分は、火傷しそうなほどに熱い。
 普段は涼しげな表情を浮かべているマクギリスは、いまは額に汗を浮かべ、苦悶の表情を浮かべていた。苦しげに見えるその表情の下でじっくりと快感を貪っていることを、石動は知っている。
 目をそらさず、飽きることなくじっとその顔を見つめていれば、うっすらと目を開いたマクギリスと目が合う。ふっと妖艶な笑みを浮かべたマクギリスに、たったそれだけのことなのに暴れ出しそうな欲望に石動はぐっと歯を食いしばって耐える。
「お前は本当に、この顔が好きだな」
 出会ったときからそうだったと。小さく笑いながら、マクギリスは熱い息を吐き出した。




to be continued...