眼鏡




「赤司くんにお願いがあります」
 目をキラキラと輝かせながら見つめてくる可愛らしい恋人に、赤司は目を瞬かせた。
「なんだ?」
「これをどうか、掛けてください」
 さっと差し出されたのは、眼鏡だった。
 眼鏡やコンタクトをするほど視力が悪いわけではない赤司は、黒子から差し出された眼鏡に眉を寄せる。
「掛けるのは別に構わないが、なんで急に眼鏡なんて」
 減るものでもなく、恋人たってのお願いごとならば別に眼鏡のひとつやふたつ、掛けることは構わなかったが、またどうして眼鏡なのかと、赤司は理由を尋ねる。
「眼鏡を掛けた赤司くんがどうしても見たくて! 赤司くんに似合いそうな伊達眼鏡を用意してみました!!」 
「テツヤは眼鏡フェチだったのか?」
 いつになくテンションの高い黒子に引きつつも、それで喜んでくれるなら安いものだった。
「いえ。ただ、黄瀬くんが眼鏡を掛けた姿が思いのほか格好良かったので、赤司くんだったらもっと格好良くなるんじゃないかと思いまして」
 どうして眼鏡なのかという理由がようやく分かったが、その動機に赤司は機嫌を少し損ねる。
「赤司くん?」
「涼太はそんなに格好良かったか?」
 きょとりと目を瞬かせた黒子は、くすくすと笑う。
「そうですね。改めてモデルをしてるだけあって黄瀬くんは格好いいんだなって思いました。でも、僕が好きなのは赤司くんだけですよ」
 だから安心してくださいと、黒子は微笑む。
「テツヤ」
「拗ねた赤司くんも好きですよ」
「僕も笑ったテツヤが好きだ」
「じゃあ、僕たち両思いですね」
 恋人なのだから両思いなのは当たり前だが、改めて言われて悪い気はしなかった。