緑間君と高尾君と!   緑間×黒子




「お待たせしてしまってすみません」
 予定よりも少し遅れた黒子が待ち合わせ場所へと慌てて駆けつければ、すでに緑間と高尾のふたりが待っていた。遅れたことを開口一番に謝罪すれば、良いよ、良いよと高尾は朗らかに笑う。
「それよりテっちゃん、浴衣が良く似合うね!」
 私服姿ではなく、紺色に格子柄の浴衣を着て現れた黒子に、高尾はテンション高く褒めちぎる。
 部活の休憩中、黒子が何の気なしに今日は自宅のすぐ近くで祭りがあるのだと話したところ、だったら祭りに行こうと高尾が言いだした。最初は渋っていた緑間も、黒子が祭りに行くと返事をしたことによって、急遽三人で祭りに行くことが決まった。
 部活で大量の汗を流した後ということもあって、一度自宅に戻ってからの待ち合わせ。急遽遊びに行くことになった祭りに、緑間と高尾のふたりは私服姿だったが、黒子ひとりだけが浴衣姿で遅れて現れた。
「祭りに行くと言ったら、せっかくだから着て行けと母がうるさくて」
 元々黒子も私服で出かけるつもりでいた。が、祭りに行くからと夕食はいらないと母に伝えたところ、せっかく祭りに行くならと、無理矢理浴衣に着替えさせられた。お陰で遅れてしまったと、黒子は恥ずかしそうに言い訳する。
「遅刻ぐらい気にしなくて良いよ。それでテっちゃんの浴衣姿が見られたんだもん。むしろお母さんに感謝しなくちゃ」
 かわいいよと褒める高尾に、黒子は頬を膨らませる。
「嬉しくありません」
「えー。真ちゃん、浴衣姿のテっちゃん、かわいいよね」
 かわいいと褒められても嬉しくないと返す黒子に、高尾は緑間に同意を求める。いつもならすぐに何か返してくるのに、黙り込んだままの緑間に、あれっと高尾と黒子のふたりは振り向く。
「緑間君?」
 どうしたんですかと黒子が尋ねれば、はっとした緑間は黒子から顔をそらす。その耳はどことなく赤くなっていた。
「……よく、似合うのだよ」
「ありがとうございます」
 きょとりと瞬きをひとつ。
 恋人から褒められて、嬉しくないはずがない。が、どうしてか急に恥ずかしくなった黒子は、顔を赤くしながらお礼を言うと、うつむいてしまった。
 黙り込んだまま甘い雰囲気を漂わせ始めたふたりを、高尾は冷めた目で見やる。
 傍目から見れば、付き合いだしたばかりの初々しいカップルで微笑ましい。が、それはふたりっきりでいる時に限る。自分もいるときにやられたら、独り身にはたまったものではないと、高尾は内心で愚痴る。
 ふたりっきりで祭りに行かせてあげたかったが、今から自分ひとりで祭りに行くのも寂しすぎる。そもそも祭りに行こうとふたりを誘ったのは自分なのだしと、ひとり色々と考え込んでいた高尾は、よしと呟く。
「テっちゃん、早く祭りに行こうー!」
 やっぱり三人一緒に祭りに参加しようと決めた高尾の行動は早かった。
 黙り込んだまま緑間と向かい合っていた黒子の腕を取った高尾は、そのままふたりで祭り会場へと向かう。
「待つのだよ、高尾!」
 ひとり残された緑間は、先に向かってしまった高尾と黒子のふたりの後を慌てて追いかけた。