緑間君と!   緑間×黒子




「緑間君!」
 放課後、部活動のために更衣室へと向かう途中、呼び止められた緑間は足をとめる。ぱたぱたと駆け寄ってくるのは、近頃部活動以外でも話すようになった黒子だった。
「黒子か。どうした?」
「先日君が話していた新書ですが、来月図書室に入荷することが決まったので、それをお知らせしておこうかと」
「何? それは本当か」
 偶然、昼休みの図書室でばったりと会ってからと言うもの、緑間と黒子はお互いに読んでいる本の趣味が似ていることを知った。しかもお互いに本の虫という共通項に、話も弾む。
 読みたい本はごまんとあれど、その全てを手に入れるのは中学生のお小遣いでは難しい。お互いに持っていない本の貸し借りや、どこでどの本を借りられるかなどの情報交換を、最低でも週に一度行われる。特に図書委員である黒子からの、毎月図書室に入荷される本の情報は貴重だった。
「はい。先生にお願いをして、君が真っ先に借りられるようにしておきました。入荷したらお知らせするので、取りに来て下さいね」
「礼を言う、黒子」
 好んで買う作者のその本は、ハードカバーで売りに出されてからしばらくして文庫化される。中学生にしては少なくはないが、それでも限りあるお小遣いで買うにしては、その本は少々値が張った。
 文庫本になるまで待とうと思っていただけに、学校側が入荷してくれるとなれば、早く読むことが叶う。発売日から少し経っているとはいえ、思っていたよりも早く読めそうだと、緑間の心は浮き立つ。
「読み終わったら、ぜひ感想を聞かせて下さいね」
「もちろんなのだよ」
 こういった本の感想を言い合うのもまた、近頃の楽しみになっていた。お互いに読み終わった後に論議を交わすのもまた、緑間の楽しみのひとつだった。